塩谷住宅建築代表、塩谷敏雄が日本の住宅事情に物申す!?随時更新中です!
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第3回:日本の住宅は何故寿命が短い?【その2】 (2010.5.20 更新)
今回は、戦後から現在に至る住宅事情、住宅の「耐用年数」と「寿命」が混同されている現状について掘り下げてみたいと思います。よろしければお付き合いください。

住宅建設5ヵ年計画とハウスメーカの台頭

戦後しばらくは、日本は造っても造っても足りないような住宅不足が続いていました。

そんな中、昭和41年に「住宅建設5ヵ年計画」が制定され、全国に大規模な住宅建設が開始されました。そして、私鉄沿線においても大規模な分譲住宅が建設されました。

当時は一般の住宅においては、まだまだ地域の工務店へ依頼していましたので、工務店は地方から出てきた若者を沢山雇い入れ、どんどん独立させ、小さな工務店が沢山出来ていきました。

法的に整備されていたとは言い難い小規模な住宅やミニ開発された分譲住宅は、そんな小さな工務店の資質に左右されることが大きかったのです。

そんな時代に住宅を建設する担い手として新たに登場したのがハウスメーカーです。
(住宅展示場で、ネクタイを締め背広を着た営業マンが接客するという方法が 今では当たり前のように行われていますが40年前には考えられない事でした。)

行政は、時代の変化である核家族化にも相まって、量的に不足をしていた住宅の担い手をハウスメーカーに託す事にしたのです。

ハウスメーカーが建てる家は、何よりも大量に生産でき、正確に管理が出来るというメリットがありました。質的にも平均化することができ、ハウスメーカーはどんどん台頭していきました。

そんな中、いつしか「住宅の寿命は25年」ということが当たり前のように言われるようになりました。何故か?
その大きな理由の一つとして、日本独特の「耐用年数」と呼ばれる算定方法があります。

耐用年数とは?

耐用年数とは、本来、所得税法や法人税法に基づいて規定された減価償却の算出の為に使用される年数です。
税制上の都合から、この年数を基準に使用期間を決定される場合が多いこともあり、 いつの間にか耐用年数が建築物の寿命であると混同されるようになりました。

>>国税庁ホームページに「減価償却資産の耐用年数表」が掲載されています。合わせてご覧ください。

この表では、木造は「合成樹脂造」「木造モルタル造」の二つしかありません。住宅用の項を見ると、合成樹脂造が22年、モルタルが20年となっています。

しかし、耐用年数というのは、このように大雑把に括れるものではなく、本来は建築物を「構造部分」に分解することから始まるのです。
例えば、鉄筋コンクリート(RC造)の場合、躯体の鉄筋コンクリートの「中性化」が終わった時を持って耐用年数を設定しています。同時にアスファルト防水は20年、タイルもしくはモルタル仕上げの外壁は30年、構造躯体については120年から150年という耐用年数を設定しています。

そして、木造に関しては、布基礎で主柱3.5寸角の構造体を50年、建具20年、屋根は50年、水廻り軸組みは25年と決められています。
建物の出来にもよりますが、構造や屋根だけで見れば50年なのです。

しかし、耐用年数=住宅の寿命・価値は、木造は25年、RCは50年とよく言われています。

国税庁ホームページの表にあるような耐用年数は、あくまでも建築物の減価償却期間であり、償却費から償却年数を足しただけの年数でしかないのですが、いつの間にか、固定資産税の算出方法の一つである「耐用年数」が建築物の寿命と間違えられてきてしまったのです。

そして25年経ったら建て直し、という事が当たり前のように言われるようになりました。
腕の良い大工さんがしっかり造った家ならば、実際は手を入れて大事にすれば、 もっと寿命は延びるのに・・・何故でしょうか。


耐用年数と寿命が混同されている事実・・それは何故でしょう?

国の「スクラップアンドビルド(作っては壊す)」の方針と「建築業者の都合」がうまく合致したからと言えます。

不動産の評価ともかみ合わず、消費者のためではなく「管理する側の都合」と「造る側の都合」により、日本は高いわりに長持ちしない、住めば住むほど価値がなくなってしまうような住宅を造り続けてきたのです。

そして木造の住宅は25年経てば「土地付き中古住宅」ではなく、「古家付き土地」として取引され、どの様な住宅であれ皆同じ扱いをされてしまいます。

つまり、25年しか持たない住宅を、政府の主導によりハウスメーカー等が作り続けてきた結果なのです。

しかし近年の少子高齢化と人口減少により、今後、我々日本人は世界でも例を見ないほどの局面を迎える事になります。 今まで行われてきた「スクラップアンドビルド」という政策から良質なストック社会へと転換を図っているのです。

次回は、このことを検証してみます。

【続く】